真夜中の子供
真夜中の子供
辻 仁成 著
河出文庫 出版
328ページ
<あらすじ>
日本屈指の歓楽街・博多中洲。その街で真夜中を生きる無戸籍の少年がいた――凶行の夜を越え、彼が掴みとった自らの居場所とは?
ホストとホステスの両親にネグレクトを受け、戸籍もない。学校にも行けず、夜の街をさまよっていたが、歓楽街の人々の人情に支えられ、認められる存在になっていく。
家族の繋がりを超えた人間の強さと温かさを描く感動作。
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作中では、博多祇園山笠の「オイサ、オイサ」とかけ声をあげる舁(か)き手たちの熱気もつづられる。
福岡で幼少期を過ごした辻仁成さんは、現在シングルファーザーとして子どもを育て、異国に暮らしている。だからこそ描けた物語だという。
パリで生活して約15年。14歳の長男との2人暮らしで、家事や料理をこなしながら作家活動をしている。そんな中、日本で取り沙汰される児童虐待や子どもの貧困のニュースが気になっていた。カトリックの影響の濃いフランスでは、隣人を愛し、他人の子も自分の子のように守る意識が強いという。子どもに何かあれば、社会全体で介入もする。「今の日本の子どもに起きている痛ましい事件は、フランスでは考えられない。僕は一人の父でもあるから、書かないといけないと思った」
実際に山笠を運営する一つ「中洲流(ながれ)」の人たちに原稿を見てもらった縁などで、辻さんは博多祇園山笠に参加し、台上がりをした。「話を聞く中で、博多の人情は山笠という神事に根ざしていると感じた。真夜中の子供の孤独を、博多の人情が救うことができると思った。」という。
※「好書好日」サイトより一部引用
https://book.asahi.com/article/11706475
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<著者プロフィール>
辻 仁成 (ツジ ヒトナリ)
1959(昭和34)年、東京生れ。福岡・帯広・函館など各地で育つ。
歌手、映画監督、小説家。2003年よりパリ在住。
1989年、「ピアニシモ」ですばる文学賞を受賞し作家デビュー。1997年「海峡の光」で芥川賞、1999年『白仏』仏語版でフェミナ賞外国小説賞受賞。
近著『なぜ、生きているのかと考えてみるのが今かもしれない』『父ちゃんの料理教室』『ちょっと方向を変えてみる 七転び八起きのぼくから154のエール』『パリの"食べる"スープ 一皿で幸せになれる!』