わたしのおとうさんのりゅう

著者：伊藤比呂美
出版社：左右社
四六判　並製　280ページ

1955年東京都生まれで、詩人・小説家の伊藤比呂美さん..
伊藤さん自身を作り上げてきたという児童文学作品と、当時の記憶をめぐらせながら綴られるエッセイ。


ーー高度経済成長期に入りかけた頃の東京の板橋区の裏町の裏通りをさらに入ったところで、「私」は夢中で本を読み、父と母は過去を隠して暮らしていた。

なんと漂流、脱獄、逃走が多かったことか。親のない子、親から離れた子の話が多かったことか。何もかもが旅でした。まるでそれが、児童向け図書の目的であるといわんばかりに。

おとなたちは、だれもが戦争を生き延び、戦後を生きていた。全集の企画者も、翻訳者も、編集者も、そして買ったおとなも、私の父も、心のどこか奥底で、それを、子どもたちに、私に、手渡したかったのだとしか思えないのです。
（版元サイトより）